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百人一首の記憶

今から30年以上前、私は高校生で同じクラスに気になる男の子がいた。

高校3年生は選択授業も多く受験期は出欠もばらつき会うことも少なく

ほとんど話したこともないまま卒業式を迎えた。

式を終え校門を出たものの私は教室に戻った。誰もいない教室で彼の席に座った。

何か彼の物が残っていないかと机の中に手を入れるとカサッと音がした。

それは一枚の小さな紙だった。

古文で百人一首の中の一首の解釈の小テストの紙だった。

彼の字で名前と解答と先生の評価がついていた。

私があなたを想っていることをあなたは知らないでしょう的なことが書かれていて

私は涙が止まらなかった。

もはや持ち帰ったはずの紙は実家にあるのかさえわからない。

娘が小学生になり百人一首を覚えているのをみてあの歌はどの歌なのかと

思い出して探したのだった。

 

 かくとだにえやは伊吹のさしも草 さしも知らじな燃ゆる思ひを

 

この歌の前では高校生の自分に戻る。